こんな話を聞きました。
「スギ植えるよりカヤ生産のほうが金になる」
この言葉は里山の深刻な現状を伝えています。
スギは植林してから一人前の大木として育つまで
50〜60年の歳月を待つことになります。
この間、下草刈り、枝打ち、つる切り、間伐など
山の手入れはとても手間がかかります。
10〜15年で一度目の間伐、30〜40年で2度目の間伐、
主伐期を迎えるまでには数十年近く、山の面倒を見ます。
一方、カヤは、この辺りではススキが用いられます。
ススキは毎年、穂が垂れ下がる頃になると刈り取られ、
茅場に集められ蓄えられます。
間伐ですら10数年に一度、主伐になると収入を得るのは
植林後実に50年以上も待たねばなりません。
林業に対し、カヤ売りは農作物と同じように
毎期の収入が見込めます。
このことだけでも、木を育てるよりカヤを売ったほうが
安定収入が得られるということ。
さらに。
木はかけた労力に比べると
一本の丸太価格が安すぎて
とても採算が合わない・・・
そうして山を下りる林業家がしだいに増え
村の過疎化に拍車がかかる・・・
山に人手が入らなくなり山はしだいに荒れ、
地場産業である林業の退場とともに村に活力がなくなる。
日本の山村はざっとこんな調子で疲弊していきます。
では、スギより金になるカヤ生産は向上したかというと、
こちらも衰退の一途をたどっています。
これは明らかに茅屋根の家が減ったことによるもの
(というより消滅したことによるもの)です。