地球が沸騰する話 2024

もはや地球は温暖化の時代が終わり、
「地球沸騰化の時代が到来」
"The era of global boiling has arrived"
と国連のアントニオ・グテレス事務総長が警告したのは2023年。

あくる2024年。
警告は的中した。

 2025年1月10日、世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関 「コペルニクス気候変動サービス (Copernicus Climate Change Service=C3S)」が、 「2024年は産業革命前の水準から1.5℃を超えた最初の年」
("2024 is the first year to exceed 1.5℃ above pre-industrial level")
と発表した。

 やはりそうか、との思いが先にたった。

 同機関の発表を要約すると、2024年はヨーロッパにとって観測史上最も暑い年となり、 平均気温は10.69℃で、1991年から2020年の平均を1.47℃上回り、2020年に設定された前回の記録よりも0.28℃上昇した。

 一方、同機関の分析によると、世界の平均気温は15.10℃で、1991年から2020年の平均を0.72℃上回り、過去でもっとも暑い年であった2023年の記録(14.98℃)を0.12℃上回った。

 2024年は、産業革命前の水準を1.5℃上回った最初の暦年となった。 過去10年間(2015-2024)は、いずれも観測史上最も温暖な10年の1つであり、世界の月平均気温は、1年のうち11ヶ月間、産業革命前のレベルを1.5℃上回った。 さらに遡ると、2023年7月以降、2024年7月を除くすべての月が1.5℃を超えた(ただし、7月22日は、世界の日平均気温が17.16℃の過去最高を記録)。

 2024年は、産業革命前の水準を上回る年間気温偏差が1.5℃を超える初めての年となった。 これは、パリ協定で定められた制限値(少なくとも20年間の平均気温の異常を指す)を破ったことを意味するものではないが 「現代人がこれまで経験したことのないレベルに上昇している」(" Global temperatures are rising beyond what modern humans have ever experienced.")ことを強調するものである。

 C3Sの発表は世界の平均気温と海面水温の上昇の関係にも言及している。
 世界の気温上昇の主要因は人為活動にあるとされているが、2024年は、南米の赤道付近で海面水温が高い状態が続く「エルニーニョ現象(ENSO)」の発達も一因とされている。 ENSOは2023年12月にピークに達し、2024年前半も地球の気温に影響を与え続けた。
 海面水温が上昇したことにより、大気中の水蒸気の総量は2024年に過去最高に達し、熱帯低気圧などの大型暴風雨の発生にもつながるという。日本にも大きな被害をもたらしたことは記憶に新しい。

 気象庁によると、日本周辺の海面水温はこの100年で1.28℃上昇したという。
 海に生きる生物にとって、この大きな環境変化は脅威である。環境に適応できない種は、安住の水を求めて「集団移住」を余儀なくされる。 その結果、異変は漁獲量の減少となって人々の生活に影響を与える。真っ先に苦境に立たされるのは漁業で生計をたてる人々だ。

 近年、サンマの漁獲量の落ち込みが激しい。かつては庶民の魚といわれ、秋の風物詩だったサンマが高値になり、しかも店頭に並ぶサンマはどれも細身に見える。 なぜだろう。サンマの身になって考える。
 サンマは主として北太平洋に生息し、秋頃になると千島海流という寒流(親潮)とともに千島列島から宮城、福島県沖にかけて回遊していたといわれる。 ところが太平洋側を北上する暖流(黒潮)の海面温度の上昇とともにサンマは、日本近海より快適な冷たい海域に「移住」した可能性がある。

 気候変動は水陸を問わず、そこを棲家とするあらゆる生物にとって脅威であることは間違いない。
 気候変動に適応できる生物は、サンマと同じように地球上のどこかへ「集団移住」することによって種を存続させることが可能かもしれない。 「移住」する手段を有さない植物類は枯死する運命にあるのか・・・。

 近い将来、人類存続のために、移住先を宇宙に求める研究・開発が真剣に進められているそうだ。 最も有力な移住先は火星という。
 人類に代わるAIの進化が著しい。真剣になれば夢のような話も実現するかもしれない。だが私がその時代に生きたとしても、火星に向かう宇宙船には搭乗する気になれない。
 なぜならば、地球こそ生まれ育った故郷である。宇宙人となって故郷を捨てるくらいなら、 地球人として有史上数え切れない自然災害の犠牲者の一員としてこの星で天命を全うすることを望む。

 コペルニクス気候変動サービスのディレクターであるカルロ・ブオンテンポ氏(Carlo Buontempo,Director of the Copernicus Cimate Change Service)は、
「迅速かつ断固とした行動をとれば、未来はまだ変えることができる」
("The future is in our hands - swift and decisive action can still alter the trajectory of our future climate.”)
とメッセージを送っている。
 私は、氏のメッセージに応えて、未来を変える一員でありたい。人類のみならず、すべての生物が自然と共存・共生する未来をめざしたい。

2025年1月14日