田舎暮らし。
福島のある里山。
雑木林に囲まれ、田んぼの風景が広がる農村。
ここに築100年ちかい茅葺きの民家があります。
縁あって、ここで過ごす機会に恵まれました。
今年の春のことです。
地元で活躍中の陶芸作家が
以前住まいとしてつかっていましたが、
ここ10年近く空家になっていたところを、
家主さんのご好意で泊めさせていただきました。
田舎暮らしのはじまり。
まずは、掃除をすること。
ガラスサッシはありません。
内外の仕切りは雨戸と障子戸だけ。
雨戸を開け放すと内と外の空気がひとつになり
漆黒の室内に光と風があふれます。
10年分のすす払い。
ゆったりとした間取りに高い天井。
ほうきやはたきを手に、はしごや踏み台を使って家中隅々まで。
ちょっとした探検気分にもなります。
ほこりを取り除くと、今度は拭き掃除。
廊下や板の間の雑巾がけ。
すると、どうでしょう。
床や柱、建具、家具・・・
すべてが永い眠りから覚めたように
深く、慎ましく、静かに光りはじめました。
土地の精、家の神がきっと宿っているのでしょう。
その夜は静かに更けていきました。