村のはずれに陶芸家の工房があります。
ゆるやかにのぼりきったところに
煙がたちのぼる小屋が目印です。
おだやかに晴れ渡った秋の日、
ちょうど窯焼きの最中でした。
穴窯といわれる珍しい窯で
約一週間、昼夜を問わず焚きつづけます。
小屋といっても本来屋根と柱だけの構造で
壁に見えるのは実は薪束の山です。
一週間の窯焼きで大半の「壁」が消えるそうです。
薪は近くの山から伐り出された間伐材が主ですが
なかには村の土木工事のために伐採されたものも。
いずれも窯焼きの日に備えて
2年から3年も天然乾燥させて蓄えてきたものです。
窯は蒸気機関車を連想させる形をしています。
ほぼ5分ごとに焚き口から数本の薪をくべます。
焚き始めてから三日ほどで
中の温度は1200度もの高温に達しています。
ピーク時には1300度を超える温度を一週間維持しながら、
さまざまな形をした陶器が焼かれていきます。
建築もそうですが、もの作りの現場には
じっくりと時間をかけながら成果を待つ悠久さが漂います。