東急池上線の木造駅舎

 私の住む街を走る東急池上線。
 東急グループにあっては珍しい三両編成のローカル線。 最寄りの駅は「洗足池(せんぞくいけ)」
 その昔、日蓮上人が旅のつかれを癒す為にこの地に立ち寄り、池の畔で足裏の泥を落としたとか、言い伝えがあります。

 池の周辺一帯は「風致地区」といって昔ながらの景観が保たれているところ。 近年は「観光地」として整備されつつあり、休日になると池の散策に訪れる方も増えているようです。

 近ごろ東急電鉄池上線は、駅ホームの「木造化」を図っています。 それまで鉄骨プレハブの仮設的駅舎が多かったのですが、東急グループのイメージアップ戦略からか、 ローカル線である池上線の駅舎のリフレッシュ工事が進みました。
 なかでも「戸越銀座駅」「旗の台駅」は、東京多摩産材をふんだんに使った「木の香り」が漂うモダンな木造駅舎に変身し、地元民のみならず駅を通過する乗客にとっても「憩いの時間」をもたらすオアシスと好評のようです。

 ところで。  私は東急池上線の「洗足池駅」をよく利用します。 これまで半世紀以上この街に住んでいますが、洗足池駅は創建当時のおもむきをそのまま現在に伝える貴重な歴史的遺構です。
 同様にお隣りの「石川台駅」も洋風トラス小屋組によるシンプルな木造架構のレトロな駅舎。 東急グループは順次駅舎の木造化を図っているようですが、 新幹線のホームのように、 通過する旅行客にとって「どこの駅も同じようなデザイン」で どこを通過したのかわからないような画一的なデザインは避けてほしいというのが、 地元民でもある私の本音です。
 建て替える必要はない、今の駅舎の姿をいつまでも大切に維持して後世に伝えることも意義あるローカル鉄道事業と考えますが、 時代の流れに逆らえないとすれば、老いを感じるのはこんなときです。

2021年 11月

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