東京の未来を考える

シリーズ第1回は地元東京から。
いきなりですが、苦言を呈します。

限りなく発展する首都東京

写真は日比谷公園。
私が未来に向けてぜひ持続的発展を遂げてほしいと思う都市風景です。

「江戸」が「東京」と改称され、日本の都と定められたのは明治維新のころ。 その後、東京は二度の大きな災難から奇跡的復興を遂げました。
そう、関東大震災と東京大空襲。 大正と昭和時代のことでした。
特に、昭和の戦後復興は、のちに東京オリンピックの栄光へとつながります。

1964年の東京オリンピックから半世紀超にわたり、世界都市東京は膨張の一途を辿ります。

1980年代後期にはバブル絶頂期を迎え、都心の再開発ラッシュに飽き足らず、 かのニューヨークロックフェラーセンタービルを買収する日本商社が登場するなど、 日本の、その首都東京の躍進は目覚しいものがありました。

1990年代初頭、そのバブル崩壊後も、相次ぐゼネコン倒産危機の渦中にあっても、銀行側の「債権放棄」という信じ難い護衛船団政策により 九死に一生を得た建設業界は、その後息を吹き返し、奇跡的V字回復を遂げました。

二度目の東京オリンピックがコロナ禍により、当初の経済効果を見込めず、事実上「失敗」であったにも関わらず、 依然として国、都は「都市再開発」という名の下、都市政策は拡大膨張路線を維持しています。

今後国内の少子化が進み、経済成長が限定的と確実視されるにもかかわらず、です。 コロナ禍が終息すると、いよいよ地球温暖化対策が急がれます。

東京丸の内、日本橋、常盤橋エリアはオリンピック景気より以前から再開発計画ラッシュという噂はかねがね聞いておりました。 ところが、コロナ禍によって将来のオフィスビル需要が減少に転ずるという観測のさなかに、 某大手不動産会社と東京都が相次いで発表した都市再開発ビジョンにはあいた口がふさがりませんでした。
「2025年までに高さ日本一を奪還する超高層複合ビル計画」「2030年までに世界一の金融都市を実現」
これでは、「2050年まで二酸化炭素実質ゼロ」の政府公約は遠のく一方と危惧するのは私だけでしょうか。
なぜ?懲りずにまだやるの?

江戸にかえろう

将来の東京、そして日本の未来を背負う政治家・リーダーを夢見る若者たちよ、 私は言いたい。
ニューヨークの「大量の鉄とコンクリートとガラスによってデザインされた摩天楼群」を追うような都市政策はやめよう。
日本には日本の、東京には東京の、それぞれ地域の歴史や風土に根ざした都市づくりを考えよう。
大震災や空襲で焼け野原になったどん底から這い上がったその情熱には敬意を表そう。
でも大切な視点は明治維新後に首都となった東京の復興ではない。
東京の原点、明治維新よりもさらに前の、さらに産業革命以前の日本の都の姿に東京を戻そう。

江戸を返せ。
隅田川の水辺の風景を返せ。
頭上に首都高が走る日本橋の風景をもとに戻せ。

街ゆく庶民のファッションは、江戸小紋の粋な作務衣がいいじゃないか。
世界中の首脳を招いて開く国際会議には、わが国の首脳は越後絣を纏ってお迎えすればいいではないか。

同様に、
京都を返せ、
大阪・神戸を返せ、
福岡も、名古屋も返せ、
沖縄ではなく、琉球を返せ、
北海道ではなく、アイヌ文化を返せ、

と「返せ返せ」の大合唱の輪が広がるのなら、
きっと東京の姿も、日本の姿も今の風景より大きく変わり、
「これこそ私たちが訪れたいと思っていたニッポンだ!ジャポンだ!」
と世界中の人たちが観光客となって押し寄せて、
そのときに初めて真の「インバウンド効果」が生まれる、と私は思う。

世界一の金融都市なんぞ、砂上の楼閣である。

江戸にかえろう

これはノスタルジー運動ではない。

平屋の住宅街にすれば、どの家にも日照と風通しが満たされる。
そのためには、一住戸あたりの土地面積を広くする。
建蔽率40%として最低200平方メートルは必要だ。
クルマはシェアすればいい。車庫はいらない。
耐震、防火構造を行きわたらせる。
これは重要だ。徹底させる。

役所をはじめ、公共建築物も低層建築にしよう。
地盤を荒らす杭工事も地下工事も不要だ。

そうだ、地下鉄は廃線にして路面電車を復活させよう。
スーパーマーケットは郊外に移転し、
駅前商店街を復活させよう。

そうすればエレベーターもエスカレーターもいらない。
低エネルギー消費都市が実現する。
低密度になればインフラの負担も軽減され、
当然、維持管理コストも低減され、
廃棄物も確実に減るはずだ。

東京は持続可能な防災都市江戸に生まれ変わる。

東京にとってSDGsとは何か?
明るい東京の未来とは何か?
それを考えよう。

2021年 10月

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