2013年元旦
わたしは夢をみた。
ことしは建築家として独立して10周年にあたる年。
ささやかではあるが一城を築いて10年になろうとしていた。
そこで「国見」の旅に出かけよう、と思い立った。
「国見」というのは、古代の天皇が見晴らしのいい丘に登り、
丘の上から天地を見渡し、
その年の五穀豊穣、民の暮らしの幸せを願う儀式とされていた。
国見の季節は春である。
古代の暮らしの中心にはたえず「天」の存在があったと思われる。
「天」とは、神としての天皇であり、
また自然の象徴としての「天」である。
そして地上の民は、「天」の下にあってたえず神・自然と共生する、
天下一体となって国が繁栄することを願って、
古代天皇は「国見」をたいせつにしていたのだろうか。
国見にのぼった丘は今の奈良県桜井市にある畝傍山、香具山あたりとされている。
国見の季節は早春ときまっていた。
「やまのべの道」といってここは古代からおおくの人々がとおった道である。
「万葉集」にはこの地方、この道にちなんだ多くの歌が残されている。
歌集をひらけば、国見にのぼったその丘から天皇が詠んだと伝えられる歌がある。
春のおとずれのよろこびをおおらかに謳いあげた
ではじまる歌は、古代の英雄、雄略天皇作と伝えられ、 約4,500首にのぼる万葉集の巻頭を飾る早春の歌である。
大意は、
そして私も「国見」に出かけよう、と思い立ったのである。
私は2013「巳年」の年賀状の図案に「錦帯橋」を選んだ。
国見の旅路は「平城京」を出発点として「出雲」「隠岐」「瀬戸内海」「伊予」「伊万里」を周遊して「平城」にかえる、というルートを描いた。 長い旅路の休憩に「錦帯橋」をおとずれることを忘れなかった。
古代よろずの神がとおったとされる旅路をなぞることにした。
「古事記」には万(よろず)の神が登場する。
私は古代万の神のあとを追うことによって、この先の私の進路をたずねよう。
2013年元旦
わたしのみた初夢は、そんな夢だった。
2013年 1月