奈良へは中学・高校の修学旅行で訪れて以来、成人してからも、特に法隆寺宮大工西岡常一棟梁の本に出会って以来、足繁く通いました。
目当ては、法隆寺や薬師寺など、西岡棟梁が修繕工事を手がけた社寺を見学すること。
奈良を訪れるとわかることですが、平城京から平安京にかけて栄えた古都ですが、奈良は京都に比べると古代の面影が色濃く残っています。
理由を尋ねると、奈良は埋蔵文化財が数多く、建設現場で遺跡が発見されると奈良県が長期間にわたって詳細な調査を行なうことになっており、
このため規模の大きい建物は建設スケジュールが狂うリスクが大きく、建設計画そのものが敬遠されるからだ、ということです。
私が奈良の社寺仏閣を訪れると、周辺の環境は京都のそれとは大きく異なり、
民家も大正から昭和の戦前戦後に建てられたものが多く、歴史のロマンを感じます。
市街地においても京都と比べて農村の風景が多いことも特徴といえます。
「やまのべの道」の存在は早くから知っていました。
いつかは歩いてみたいと思っていたコースです。
ところで私は古都の社寺を訪れるようになって古代の歴史に興味をもちはじめました。
源氏物語は読んだことはありませんが、吉川英二の「新平家物語」「宮本武蔵」「三国志」は夢中になりました。
そのうち「古事記」に興味をもちはじめ、原典は難解のため避けましたが多くの訳本の中でも、
とても読みやすい現代語訳(文庫本サイズ)の一冊をみつけ、読み始めると面白くてたびたび読み返すほどでした。
2013年の正月頃だったでしょうか。
そうなると「やまのべの道」を歩きたい、との衝動は次第に強まり、
九州の「スケッチ旅行」の前に奈良で途中下車することはまたとないチャンスだったわけです。
コースはいろいろと練りました。
古事記は、神話の世界ですが、国づくりから始まり、瀬戸内海、伊万里、高千穂、霧島、壱岐の島、出雲、伊予、大和・・・。
舞台は西日本から始まります。さらにはヤマトタケルの東北地方征伐の旅など、
現在の仙台以南の広い地域に登場する神々の物語。
どこから旅を始めるか。九州のスケッチ旅行を控えた3月、私のプランは決まりました。
そうだ、やまのべの道をあるきながら古代史のロマンに浸ってみよう、と考えたわけです。
やまのべの道をあるくと、いたるところに歌人や天皇、皇女らが詠んだ歌の石碑があります。
訳本や解説書がないと読解が困難ですが、どの歌も人間の真実を語るようなところがあって、
思想や感情など、現代人にも十分伝わるものがあります。
理屈はともかく、季節は春。存分にリフレッシュ旅を愉しもう、と歩きまわった見聞録です。
どうぞ、御笑覧ください。
2013年 4月