ニューヨークマンハッタン島。
世界屈指の大都市。
私が初めてニューヨークを訪れたのは1982年3月、24歳のとき。
大学卒業を控えて、建築科の友人二人とともに卒業記念旅行で訪れた。
建築デザインを学んだ学生にとって、ニューヨークは世界最先端をゆく
「あこがれ」の地であった。
最先端をゆくのは、建築に限らない。
ブロードウェイのミュージカル、ファッション、アート、金融、経済・・・
あらゆる分野で他の追随を許さない最先端都市であった。
建築デザインを学んだ仲間が、ニューヨークを旅しよう、とエキサイトしたのはそうした
ダイナミックな発展をこの目で確かめてみたい、という単純な動機だった。
一方、1970年代から80年代にかけてマンハッタンは麻薬、殺人、銃撃、ハーレムやサウス・ブロンクスといった荒廃したスラム街など
犯罪都市として世界で最も危険な都市という負の側面もあった。
二度目に訪れたのは、1987年3月。このときは新婚旅行で妻と旅をした。 治安は改善されて、夜のブロードウェイミュージカルやジャズクラブを楽しんだ。 ニューヨークは安全な都市の姿を取り戻したようだった。
そして三度目に訪れたのは、2013年9月。 このときは、アリゾナ州フェニックスに住んでいた叔母の病気見舞いの帰りに 「思い出の地」に妻と立ち寄った。 ニューヨークはさらに安全で快適な街に発展していた。 そしてこの頃には、全米で最も安全な街として表彰されるほどに発展したのである。
2020年、コロナが世界を襲った。 リーマンショックや9.11を経験し、一時は元気を失っていた大都市が 次第に活気を取り戻した時期に、みたび災禍に見舞われた。 ロックダウン(都市閉鎖)は長期化し、ブロードウェイの灯も消えたと聞いた。 しかし世界の他の大都市とともに逆境に耐え、 2021年夏には制限も解除され、ブロードウェイにも活況が戻ってきたと報道にあった。
「持続的発展」が世界潮流のキーワードになって久しい。 「持続的発展都市」を考える上で、ニューヨークの都市政策の歴史から学ぶところは大きいと思う。 そんな思いとともに、私が旅したニューヨークを振り返ってみたい。
2021年 10月