NYの自然

 地下ホームの改札を通り抜け狭い階段を駆け上がると、そこはニューヨーク。

 旅行者にとって胸がときめく瞬間である。
 ニューヨークを「観光地」として訪れるなら、とにかく歩いてまわるのが楽しい。
 マンハッタンは地図を見ればわかるが、南部をのぞき、街区は整然と碁盤目状に仕切られ、 道に迷うことは、まず、ない。 そのせいか地図から眺めるとこの街はどこまでも平坦だと想像するが、 歩いてみると地面は起伏に富んでおり、ここが「大地」だということがわかる。 緩やかな坂道もあって マンハッタンの「自然」を感じることができる。

 実際、セントラルパークは緑地や遊歩道が整備されて人工庭園の趣きがあるけれど、 ところどころに「原風景」として岩盤むき出しのエリアも結構あって面白い。 マンハッタンの摩天楼は、この堅固な岩盤の上に聳えているゆえ、 どのビルの柱も日本の高層ビルに比べると驚くほど細い(なによりも、日本に比べて地震が少ない)。

 思えば東京は、江戸時代は東京湾の入り江であり、利根川、荒川の大デルタ地帯であった。 湿地だったのである。 だから、そんな軟弱な土地に(皇居、日比谷、丸の内あたりは埋立地) 超高層ビルを建てること自体が、 理に反すること。 ところが日本人は優秀だから、軟弱地盤であろうが、持ち前の研究熱心、 技術力で、地盤のハンデを克服し、バブル期以降、皇居を上から覗き見できるほど 不謹慎な高いビルを建てまくったのである。

NYらしいもの

 話がすっかりそれてしまった。NYの地下鉄について話をするつもりだった。
 ニューヨークを「観光地」として訪れるなら、とにかく歩いてまわるのが楽しい。
 でも、マンハッタンは島といえ、隅々まで歩いてまわると半年、あるいはもっとかかるだろう。 滞在数日の旅行客にとって歩いてまわれるのは、ほんのわずかなスポットに限られる。 そんな時、マンハッタンの地下鉄はとても便利だ。 マンハッタンの地下には、驚くほど地下鉄ネットワークが発達していて、 どのストリート、どのアヴェニューにも必ず地下鉄駅があって、 どこからでも、どこへでも移動することができる。

 自由の女神、ウォールストリート、グリニッジビレッジ、トライベッカ、SOHO地区のジャズクラブ、 チャイナタウン、リトル・イタリー、ブロードウェイ42丁目のミュージカル、タイムス・スクエア、 五番街、セントラルパーク、近代美術館に博物館、Bronx Zoo・・・

 旅行者にとってもニューヨーカーにとっても、この上なく貴重な「足」である。 もっとも短距離移動にはバスネットワークも充実しているし、 乗り換えを嫌うならイエローキャブ(NYのタクシー)はいつでもどこでも手をあげれば停まってくれる。
 行きたいところに行ける、会いたい人に会いに行ける、いつでも、どこでも。NYとはそんな街である。

持てる超大国の悩み

  SDGsの目標に「住み続けられるまちづくりを」がある。
 買い物、通勤・通学、通院、レジャー・・・。 マンハッタンはビジネスタウンではあるけれど、それだけではない。 5番街のど真ん中でもアパートがあって飼い犬の散歩をする住人の姿を見かける。

 ところで、ニューヨーク地下鉄は24時間営業である。 これだけの地下鉄ネットワークを24時間連続運転するには、 相当なパワー、すなわち電力を消費するはずだ。
 SDGsの目標に「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」がある。
 アメリカは火力エネルギーの大消費国である。石油、天然ガス、も自給自足である。
 SDGsの目標に「気候変動に具体的な対策を 」がある。
 これからは、
「住み続けられるまちづくり」と、
「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と、
「気候変動に具体的な対策」
との三つの目標を高い次元で融和させて、持続的発展型社会・世界の実現を 目指さなければならない。 もちろんアメリカだけではない。日本も、その他世界各地各国も、である。

 アメリカは現在も超大国であることに変わりはない。 自国ファーストに陥らず、ひろく世界のリーダーとして、 SDGsの規範を示す国であってほしい。
 現在は、脱炭素社会の実現に向けて、政策面でも実行力においてもヨーロッパ(EU)が先行しているように見える。 民主主義国家のおそらくほとんどが、「強いアメリカ」の復帰を待ち望んでいるのではないだろうか。

 ニューヨークの地下鉄が24時間営業でなくなる日はやってくるだろうか。
 私はそれを注目している。

 ニューヨークから世界潮流が変われば世界の大都市もきっと追随するだろう。


2013/9/22  Subway in NY

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