狭井川のほとり

 狭井川(さいかわ)は、狭井神社の脇をちょろちょろと流れるか細い水路である。
 三輪山からの伏流水と思われる。

 古事記には、この川のほとりは、あしの原となっていて、神武天皇の皇居か、 皇居に代わる別宮の領土内だった。
 そのほとりは、天皇の待女たちの格好の遊び場だったそうだ。ある日、 七名の待女が戯れているところに天皇がひょっこり現れて、 そのうちのひとりの乙女に恋をして、皇后にむかえたという伝説がのこされている。
 乙女の名前は、伊須気余理比売(イケスヨリヒメ)という。

 狭井川のほとりとは、どんな楽園か・・・。
私が訪れた場所が神武天皇が皇后を見初めたところかどうかはわからない。 誰もいない原っぱで静かに過ごしていると、 三輪山(ご神体はオオクニヌシノミコト)のふところに抱かれて、 やすらぎを覚える。

 オオクニヌシノミコトは、かの稲葉の白兎をそっと介抱して、兎はその恩返しとして、 ミコトと八上姫(ヤガミヒメ)との恋を成就させた、という伝説も残されている。
 「古事記」を読むと、神様も案外身近な存在である、との錯覚に陥ることがある。
 バチがあたらぬよう、用心するのがよさそうだ。

2013年 11月

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