日本一のおんせん県
おおいた県 2016

 2016年4月。
 熊本地震発生。
 被災規模は、北九州3県(熊本・大分・福岡)にわたり、 広域災害に指定され、災害対策本部が各県に設置されました。

 私は、一級建築士のほか、日本損害保険協会認定の鑑定人(三級)の資格を有しており、 広域災害が発生すると、被災建物(主として住宅)の損害調査に派遣されます。
 最初の体験は、2011年3月。東日本大震災のときでした。
 この時は、千葉県に設置された災害対策本部に詰め、6月までの約3ヶ月間、損害調査に従事しました。
 今回(2016)の発動は、3・11以来5年ぶりのことです。緊張がはしりました。
 熊本地震は、4月14日に前震、同16日に本震という巨大地震が連続して発生するきわめて稀なケースでした。  震源地の熊本は、空港が閉鎖されるなどアクセスが不便なため、私は隣接県の大分災害対策本部での勤務を指示を受け、 4月18日から稼動する災害対策本部での業務に間に合わせるため、4月17日夕方に東京から空路大分入りする慌しさでした。

 大分は、2013年、2014年と、小笠原博さんの案内で訪れましたが、今回は「観光ムード」ののん気な場合になく、 連日、被災者宅を訪問し、災害お見舞いをお伝えすると共に、建物の損傷程度の調査に集中しました。
 現地では、本震の後もたえず大小の余震が発生し、 本震を体験した方々にとってはわずかな揺れでも過敏に反応し、 皆さん神経がピリピリしてたいへんお疲れの様子でした。
 特に由布院で調査を行なっていた5月5日の余震は、震度5強を記録し、地震発生と共に大勢の住民が咄嗟に家の外に飛び出すなど、パニック状態となりました。
 幸い、余震による被害は限定的でしたが、「大震災」の影響は心身ともに極限状態を強いられる辛さを実感したものです。

風景に癒される

 被災地をまわると、現地の緊張がこちらにも痛いほどに伝わってきます。
 そんな時、私の気分をほぐしてくれたのは、大分の自然風景。

 昼休みや次の調査の約束時刻まで余裕のある時など、車を停めて外の空気に触れ気分を落ち着けたことを覚えています。

 熊本地震による大分県内の被害は、由布院と別府に多かったのですが、別府の海岸沿いにはフェリーターミナルや海浜公園が整備され、 こうした観光地での休息は本当に有難い息抜きの時間でした。

大分の旅 2016

 私の大分での仕事は6月末日で終業しました。
 私は、大分で過ごす機会は、生涯で今回が最後だろうと考えていました。 3ヶ月弱とはいえ、連日県内を走り回った経験は、 心のどこかで「大分で暮らした思い出」として残るような気持ちでした。
 ささやかながら記念に大分を旅して東京に帰ろうと考え、私の妻を別府に呼び寄せ、 同時に佐賀の小笠原博さんにも声をかけ、別府市内を見物して一泊して翌日東京に帰る、という計画を伝えたところ、
「それなら私が大分のホテルまで迎えに行きますから私の車でご希望の場所へご案内しますよ」
というありがたい申出に遠慮せずに飛びつきました。

 7月1日、妻を高速バスが停車する別府に迎え、その晩は2年前のスケッチ旅行で泊まったホテルを予約しておきました。  最上階に大浴場があり、屋上には囲みの外塀に穿たれた小さな開口から別府湾が見渡すことができるくつろぎのホテル。  夕食は、現地の人に紹介された魚介料理がおいしい和食処で地魚・地酒を愉しみました。

 翌朝は、恒例の早朝散歩にでかけ、朝日山神社まで足をのばし、 境内にのぼったところでちょうど朝日が昇り、 参道の両脇に聳える杉の大木なちょうど真ん中から昇る朝日を拝むことができました。
 散歩から帰り、すかさず念願の「竹瓦温泉」で湯浴み。 この公衆浴場は、建物のつくりが立派で風格があります。

 私が驚いたのは、脱衣洗面室は一階にあるのですが、浴場は1階分地下に下りたところにあるのです。
 浴場は二層分の吹き抜けとなっていて、天井がとても高い。その高いところに窓が開放されており、 ほどよく換気され、浴場が湯気で曇ることがないように工夫されています。
別府で過ごす最後の日に、爽快な「建築体験」ができたこと、とてもラッキーでした。

 朝9時ちょうどに小笠原さんが愛車を飛ばしてホテルまでやってきました。
 伊万里から別府まで約3時間かかるとのこと。東京から名古屋までの距離に匹敵します。
「どこに行きたい?」と聞かれ、「家内が高崎山のサルを見たいというから、まずそこに寄ってその後のコースはすべて小笠原さんにおまかせします」  ということになりました。
 早速ホテルをあとにして、車で10分もかからない高崎山公園に到着。私たち夫婦はそこで車を降り、 小笠原さんは「ちょっと大分市内まで用事があるから1時間くらいで戻る」 と言い残して一旦別れました。

 高崎山のモンキーパークは山の中腹にあり、ケーブルカーを利用します。
 歩道が整備されており、歩いて登ることもできますが、 当日は朝から気温が上昇し、30度近くまで上がったような気分がし、 私は仕事の疲れも溜まっていたこともあり、グッタリとしていました。
 サルを相手にするより休みたい、というのが本音でしたが せっかく妻がサルを目当てに別府までやってきたと主張するので私は妻を放任し、 自分は木陰のベンチでグッタリと休んでいました。
 ときどき人馴れしたサルの群れが私の足元に集まり、エサでもねだるのか、 つきまとっていたのですが私が相手をしなかったため、そのうちよその客のところへ去ってゆきました。

 小笠原さんにすべてお任せした観光ルートは、
 高崎山から由布院へ向かい、露天風呂で湯浴みして、小笠原さん推薦の「おはぎ屋」でおやつを買う。そして九重 "夢" 吊大橋(くじゅう"ゆめ" つりおおはし)上からのパノラマ絶景を楽しみ、近くの牧場でバーベキューランチ 〜おすすめの温泉「筋湯温泉」で一泊という計画でした。

ところが、せっかくの絶景観光ルート道中ほとんどの区間で、私は過労による疲れから後席で居眠りの連続でした。
絶好のドライブ日和。7月の梅雨明け前とは思えぬほど雲ひとつない快晴だったというのに・・・。

 翌日は、筋湯温泉から日田に向かい、地酒酒蔵見物ならびに名物やきそば〜玖珠「慈恩の滝」へ。

 このあたりはJR久大線(久留米〜大分を結ぶ路線)と玖珠川がときどき鉄橋で交わりながら山麓を縫うように並行します。

 ロングドライブの最終目的地は福岡空港。
小笠原博さんのおかげさまで、大分勤務は忘れがたいいい思い出の3ヶ月となりました。
 また会う日まで、おたがい元気で暮らしましょう、とあいさつをして私たちはそれぞれの自宅への帰途につきました。

SDGs
Goal 17 : パートナーシップで目標を達成しよう

 「温泉は地熱エネルギー」と「別府」のページで述べました。
 「気候変動(地球温暖化)に具体的対策を」もSDGs の目標のひとつ。
 「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」もSDGs の目標のひとつ。
 「住み続けられるまちづくりを」もSDGs の目標のひとつ。
 「海の豊かさを守ろう」も
 「陸の豊かさも守ろう」もSDGs の目標です。

 こうして目標を並べてみると、日本一のおんせん県は、
 日本一クリーンな地熱エネルギーのおんせん県であり、
 新鮮な海の幸・山の幸を守ることができるおんせん県であり、
 気候変動に具体的対策を見出す可能性を秘めたおんせん県であり、
 持続的可能な、住みつづけられるまちづくりを図れるおんせん県であり、
 なによりも大分に赴任中の私のところまで佐賀県伊万里市から車を飛ばしてケアしてくれるパートナーに恵まれ、日本一のおんせん県の魅力をたっぷり体感したこと。
 SDGsを考える時代にあって、これほど明るい未来に期待できる素敵な(都道府)県を、私はほかには知りません。

別府のほかに、私が体感した大分県をご紹介します。

2016年 4-7月

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