歴史の町相馬。
江戸時代の相馬中村藩は、旧陸奥国(現在の青森県、岩手県、宮城県、福島県浜通り北部)の広い範囲を治めた藩です。
私にとって相馬は深い思い出の地。
私が独立して現在の建築設計事務所を主宰しはじめた頃から、
東京事務所のアネックスとして、
ときどき訪れては、
そこで「古民家再生」の構想を練った町でもあります。
そのアネックスは、相馬中村神社の近くの街道に面したところにあり、
毎年夏の野馬追いの日は、朝から約400騎の騎馬武者が厳かにアネックスの前を行進してゆきます。
その姿は、まさしく国の重要無形民俗文化財に指定されるにふさわしい凛々しい姿そのもの。
そのアネックスの家主は町の洋裁店を営んでおりました。
築100年は超えるであろう、堂々とした蔵づくりの古民家の1階にその洋裁店はありました。
お店には古い足踏み式ミシン数台が並んでおり、往時の繁盛ぶりを物語ります。
家主の長女しづさんは、福島県川内村に嫁いでおり、
ときどき実家に帰ってきては
「この蔵の太い梁が好き。いつかこの蔵を昔の姿に戻したい。それが私の夢」
と私に話しかけたものです。
私はその太い梁を仰ぎながら、洋装店の2階に泊めていただいた日々を、今懐かしく思い出しました。
2011年のあの日の地震にも、びくともしなかった素敵な蔵。
店の片隅にある「接客室」を私の東京事務所の相馬アネックスとして使わせていただいた日々の思い出は、
私にとって宝物です。
この蔵は、しづさんのご主人の手により、2013年に見事に再生されました。
それから8年。
2021年2.13の地震によって、
「太い梁にひびが入った」と先日、しづさんから連絡がありました。
屋根の棟瓦がずれてしばらくシートが掛けられていたようでしたが、
そのうち「文化財の保存工事」が行なわれて、私のアネックスが再開される日が待ち遠しい今日この頃です。