2021年 スズメが消えた

 「スズメを最近見かけなくなった」という声をきく。 そういえば、思い当たることもある。

 都会にある公園のベンチでお弁当をひろげると 以前はどこからともなく、雀と鳩がやってきて、 足元でチュンチュン、ポッポと何かをねだるような仕草でじゃれてきた。

 最近も天気がいいと昼休みには公園のベンチで過ごすことが多いのだが、 鳩は相変わらずやってくるが、雀がいない。
 たしかに見かけなくなった。
 それも、ここ1、2年のうちの変化だ。 まさか、コロナじゃあるまい。
 なぜだろう。

 平和島から足をのばすと、近くに東京港野鳥公園がある。
 公園内にはいろいろな解説案内板があって、それはそれで役にたつことが書かれているのだけれど、雀に関する情報はない。
 雀は野鳥ではあるけれど、渡り鳥ではない、というのが野鳥公園における定義なのかもしれない。

夏鳥 冬鳥
地球温暖化 鳥の暮らし

 日本にやってくる渡り鳥は大きく分けて、夏に飛来する「夏鳥」と冬に飛来する「冬鳥」がある。
 夏鳥は主にインドネシア方面からやってくる。
 冬鳥はシベリア方面からやってくるそうだ。
 そしてひと夏ひと冬を日本で過ごし、秋春になるとめいめいの故郷に帰っていくのだそうだ。そしてつぎの夏冬になるとまた遠路はるばる日本にやってくる。

 こんなことを学習すると「翼をください」という歌を思い出す。
 高い空を遠くまで、どこまでも自由に飛翔する野鳥を見て、レオナルド・ダ・ビンチは「鳥のように飛びたい」と夢想し、そして散った。
 まだ産業革命がおこる100年以上も前のことだ。

 飛行機の発明によって人類が初めて空を飛んだのはライト兄弟だったか。
 思えば、そのときから人為起源による温室効果ガスの排出が急速に増え出し、 地球は温暖化に向けて加速してきたのだろうか。

明日は明日の風が吹く

 風が吹くと桶屋が儲かる。
 雀がいなくなるのと地球温暖化とのあいだに何らかの因縁があるのだとしたら、 そのうち田んぼの案山子は不要になって農家の憂鬱は減るのだろうか。
 それとも雀に代わって別の外来種である夏鳥が増える、あるいはイナゴの大群が猛威をふるい、 深刻な飢饉が日本を覆うのだろうか。
 こんなことを考え出すと、今度はヒッチコックのサスペンス映画「鳥」を思い出し、背筋が寒くなった。

 私の近所にある洗足池公園の池には毎年冬になるとどこからともなく野鳥がやってきます。 きっとシベリアからでしょう。
 その冬鳥の姿もここ10年来、次第に減少しているような気がします。
 野鳥の数が減ったのか、それとも彼らは別の越冬地をみつけたのか、それはわからない。

 地球温暖化によって人類のみならず、地上のあらゆる生態系に影響を及ぼす危機が迫っていると感じるのは、こんな時です。

2021年 11月

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